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大社の正月行事「吉兆さん」

2013年1月31日

縁結びの神様として知られる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)を祀る出雲大社では、現在60年ぶりの遷宮が行われています。今年の5月10日には、大国主大神が修造の終わった御本殿にお還りになる「本殿遷座祭」が執り行われ、本殿遷座祭のあと、一連の神事が執り行われます。一方では神楽、能・狂言、流鏑馬など伝統芸能や、コンサートなど多くの奉祝行事も行われますが、この奉祝行事の中には「吉兆さん」の呼び名で親しまれている新春の伝統行事、吉兆神事も予定されております。
300年近い伝統を誇る出雲市大社町の吉兆神事(島根県指定無形民俗文化財)は、「吉兆」と呼ばれる幡を立て、笛や太鼓で奏でる囃子にのせ、地域を練り歩くもので、年頭にあたって今年1年の無病息災や五穀豊穣(ほうじょう)を祈る神事です。
私の住む町内では今年、3年に1度の順番が巡ってきて、私も笛方として、吉兆神事に駆り出されました。この「吉兆さん」で吹く笛は篠笛といって篠竹で作られているのですが、聞くところによると古民家にある茅葺き屋根の内側の材料として使われて、長い年月囲炉裏の煙で燻されたものが最良であるそうです。この笛は、音階を奏でる穴が六つある神楽笛といわれる種類となり、出雲地方で舞われる神楽の囃子で使われるものと同じものです。

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正月二日から町内の集会所に集まり準備が始まります。吉兆幡(ばん)という、「歳徳神」と刺繍された錦の赤いのぼり旗を柱に取り付け、その柱を押し立てる台に松に竹、榊にしめ縄で飾り付けをします。およそ半日掛かりの作業です。

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当日、吉兆神事は朝日が昇るか昇らないうちから始まります。集会所の前で「吉兆幡」を押し立て、神謡といわれる祝い歌を合唱します。その後、移動しながら町内の氏神さん、出雲大社、北島国造家、千家国造家でそれぞれ「吉兆幡」を押し立て、神謡を奉納します。町内を一周し、集会所まで帰ってきて終わりますが、その間休憩を挟んでおよそ半日以上に及びます。

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準備からはじまり、片付け、直会(打ち上げ会)と町内を挙げての一大行事ではありますが、町内の人口が減り、この「吉兆さん」を毎年できない町内もあると聞きます。歩きながら、しかも音が途切れないように演奏し続ける囃子方は大変な重労働でありますが、この囃子方も高齢化とともにできる人が減る傾向にあります。
そこで、数年前から我が町内でも後継者を育成するために、小学生を対象として毎月笛の練習会を開催していますが、その練習会に参加している子供たちも参加してくれたことから、無事に今年の吉兆行事を終えることができました。
今年5月19日に行われる出雲大社御遷宮の奉祝行事では、市内から十あるといわれる吉兆幡が一同に揃います。60年に一度の遷宮を迎えた出雲大社に奉納される「吉兆さん」、ぜひ見に来ていただけたらと思います。    (KEN)

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